日本語の教え方

優れた日本語教師になるためのポイントとコツを教えます

009 日本語の教え方:ひらがな

ひらがなは、最初に教える項目であり、生徒が最初に直面する壁でもあります。

 

ひらがなをしっかり教えることは非常に重要です。

なぜなら、ひらがなで躓くと、そのあとが続かなくなることが多いからです。

 

中には、自分は読み書きはどうでもいいんだ、話せるようになりたいだけだから

文字を覚えるために時間を割きたくない、という生徒もいます。

 

もちろん、人それぞれ目指すところがあるでしょうから、そういう学習法を

否定はしません。

 

ですが、ひらがなを知らずに日本語を学ぼうとすると、大きな困難が

つきまとうことになるのは間違いありません。

 

であるならば、最初に多少時間がかかったとしてもしっかりひらがなを

学んだ方が、結局早道ですし、日本語力も高くなります。

 

ひらがなとカタカナ、そして簡単な漢字は必須です。

これらをスキップして自由に日本語を操れるようはなれません。

 

なので、教える側も、その重要性を理解してもらったうえで

根気強く教えねばなりません。

 

また、ひらがなをしっかりマスターできれば、それは生徒にとっても

大きな自信になりますし、モチベーションも上がります。

(なんといっても、ほとんどの生徒にとっては見たことのない曲がりくねった

 奇妙な記号でしかないわけで、何の規則性もありません。これらをすべて

 マスターするのはかなりハードルが高いのは当然です。しかし、

 ハードルが高いからこそ、そのハードルを越えたときに得られるものも

 大きいのです)

 

では、具体的に日本語の教え方を書きます。なお、以下は私のやり方です。

教え方は先生によって様々ですから、参考になれば幸いです。

 

・教える前に伝えること

1. 教える前に、生徒たちに日本の文字、すなわち、ひらがな、カタカナ、漢字の

  3種類について簡単に説明し、興味を喚起させると食い付きがよくなります。

2. 日本では字をきれいに書くことは結構重要であることを伝えます。

 

→ 2.について補足すると、欧米の国ではそもそも字をきれいに書くという意識は

  存在しません。彼らに取って文字はタダの記号であり、読めればいいのです。

  しかし、(きれいな字を書けるとほめられる、というような理由とは全く別に)

  日本の文字は乱暴に書くと読めなかったり誤読されてしまう可能性があり、

  せっかく覚えたのに分かってもらえないという悲しい結果を招きかねない、

  だからそれを避けるためにもある程度はきちんとした文字を書かねばならない、

  と伝える必要があるのです。

 

・手順

1. まず板書で書き順を示し、ポイントを教える

  →先生が大きくゆっくり字を書いて見せます。そのとき、画数を数えてあげます。

   一緒に、きれいな字を書くためのポイントを教えます。角度とか点の位置とか、

   ここは丸く書くときれいだとか、この下のラインを揃えるといい、とか。

 

2. 練習シートに書かせる

  →マス目だけを印刷した練習シートを与え、教えた文字を1行書かせます。

   私は1行15マスぐらいのシートを使っていました。最初の数マスには

   うすくひらがなを印刷しておいて、それをなぞらせるようにしていました。

 

3. 自分のノートに書かせる

 →練習シートのマスが一列埋まったら今度は自分のノートに同じ文字を一行分

  書かせます。「あああああああ・・・・」と。もちろん、お手本の字を

  見ながらで構いません。ですが今度はマス目はなく、なぞる文字もありません。

  上手な生徒もいれば、下手くそな生徒もいます。余裕があれば、見て回って

  赤で修正してあげてください。

 

4. 習ったひらがなを使って単語を書かせる

  →上の1、2、3の工程を繰り返し、1行(例えば「あ行」)が全部終わったら、

   こんどは自分のノートに一回ずつ今覚えた5つのひらがなを書かせます。

   「あ い う え お」と。さらに、今までに習ったひらがなで書ける言葉を

   言って、それを書かせます。例えば、「あい」、「いえ」、「あお」のように。

   そして、一つ書かせるごとに正解を板書して、意味を教えます。

   こうして書かせた単語は、結構よく覚えてくれます。

   言うまでもないことですが、この場合、彼らにとって使用頻度の高い基礎的な

   言葉を書かせます。

 

以上です。これを「ん」まで続けます。

 

【注意事項】

授業のスタイルにもよりますが、一度に教えられるのは2~3行でしょう。

文法等も同時並行で教えるでしょうから、使える時間は30~40分、どんなに長くても

1時間でしょう。それ以上やると飽きてしまいます。

 

語彙を増やすためにも、興味を持たせるためにも、覚えたひらがなでたくさんの

言葉を書かせてあげてください。

 

また、書かせたらできるだけ赤を入れてあげてください。

数名の生徒を指名して前に出させて板書させるのも盛り上がって楽しいです。

 

「ん」まで終わったら、濁音や拗音、促音などについて説明します。

濁音、半濁音は書かせる必要はありませんが、拗音は躓きやすいので、たくさん

書かせます。(しゃちょう、じゅぎょう、しょっちゅう等)

 

私の学校では、ひらがなの学習が終わったら、テストをするようにしていました。

数種類のテストを用意しておいて、80点を超えるまで、何度でもやりました

すぐにパスする生徒もいれば、何度も不合格になる生徒もいます。

不合格が続くと生徒も嫌がりますが、そこを乗り越えると自信になります。

合格したら、大げさにほめてあげてください。よく頑張ったね、すばらしい! と。

 

合格したときだけでなく、きれいに書けたときも大げさにほめてあげてください。

ほめるのが一番いいのです。

 

単語ばかり書かせると飽きてしまうので、ある程度文法が進んだら文を書かせると

いい刺激になります。「ありがとうございます」とか、「わたしのいぬ」とか。

 

最初にも書きましたが、ひらがなで躓くと後が続かなくなります。

確実に覚えさせることが大切です。それが生徒の自信にもなるのです。

だから教師も辛抱強くなければならなりません。ていねいに、じっくりと。

 

カタカナの教え方も、大筋はひらがなと同様です。

ただし、もっとスピードを上げていいと思います。(ただ、ひらがなに比べると

カタカナは苦手な生徒が多いですね)

 

以上、きわめて個人的なひらがな指導法でした