日本語の教え方

優れた日本語教師になるためのポイントとコツを教えます

006 日本語の教え方:授業の流れ①「導入」

今回から、もう少し具体的に日本語の授業の進め方について書いていきます。

 

まず、学校によってカリキュラムはいろいろですから、それによって授業のスタイルも変わります。

 

例えば、一つのクラスを一人の先生が担当し、他の先生は代講などの特別な事情が生じない限り教えないというパターン。

 

または、文法と漢字と会話とその他(例えば「表現」とか「読解」とか)をそれぞれ別の先生が担当するというパターン。

 

さらに、授業の時間(60分か90分か120分か)、一週間のコマ数、生徒のレベル、生徒の年齢層等によっても、授業のスタイルや構成は変わってきます。

 

だから、一概にこう言う進め方がいい、とは言えません。

 

なので、今回はどんな授業にも参考になる「導入部分」についてだけ、ちょこっと書きます。

ちょっとぼやっとした内容になってしまいますが。

 

 

まず、導入が不要な授業もあります。

 

例えば、内容によって担当の先生が変わる場合は、いきなり本題に入るのがいいと思います。前置き等はいらない。

また、同じ先生であっても、毎日授業をするような場合は同じです。前置き等はいらない。時間がもったいない。

 

でも、週に1度とか週に2度しか生徒と顔を合わせないような場合は、最初に少しウォーミングアップとして雑談的な軽い会話をするのがいいと思います。

それによって生徒の心も学習に向けて準備できますし、数日間日本語から離れていた生徒は日本語の音に慣れることができます。

 

でもその際、本当に雑談をしていては時間の無駄です。

授業時間は1分たりとも無駄のないようにすべきですから、雑談であっても生徒の学力向上にとって有用でなければなりません。

 

例えば、

前回学んだ文法事項を少し混ぜながら話をするとか、

共通する分野の語彙を使って話をし、それをまとめていくとか。

 

語彙についてもう少し具体的に書くと、例えば日本で地震があったとしましょう。

そうすると、それを話題にします。

 

さらに、日本ではどんな災害があるか、とか、あなたの国ではどんな災害がありますか、とか話を進めていきます。

でも、生徒たちは災害の語彙を持っていません。

そこで、出てきた災害の言葉を板書していくわけです。

洪水、雪崩、山火事、津波、台風・・・・などのように。

自分の国でよく起こる災害であれば、比較的容易に言葉を覚えてくれます。

 

誰か有名人がなくなったら、病名の語彙を教える。

身内の人で病気でなくなった人はいますか、それはどんな病気でしたか。

 

スポーツが話題になったらそれぞれの国で人気のスポーツの名を教える。

 

料理であれば食材についてとか、はたまた動物の名とか、体の部位の名称とか、いくらでもありますね。

このウォーミングアップに語彙を使うのは、結構やりやすいです。

 

また、

生徒の年齢層が若ければ、最初の導入部分にゲーム的なものを取り入れるのもいいでしょう。

なんといっても盛り上がりますし、楽しい雰囲気で授業に入っていくことができます。

もちろん、ゲームといってもあっち向いてホイのようなものではなく、日本語を使ったものですよ。

 

もう少しレベルが上の生徒が対象であれば(日常会話に支障がないレベル)、話題になっているニュースを取り上げて、それに関して説明したり意見を聞いたりするのが刺激があっていいかもしれません。

 

アメリカの大統領選とか、ヘイトスピーチとか、大企業の倒産とか、そういう話題を取り上げて、背景を説明しつつ語彙も教えたり、生徒の国の状況をしゃべらせて便利な表現や語彙を教えたり。

 

何にせよ、事前にしっかり準備しておくのは当然です。それがたとえ数分間の導入であったとしても。

 

どんな話題を取り上げるか、どんな語彙をどのようなカテゴライズで教えるか、生徒にどんな質問をすれば答えやすいか、どんなゲームをしてその中で何を身に着けてもらうかなどなど、どれも入念な準備がなければ途中で必ず詰まります。

 

教える語彙は、すべて事前に書き出しておきます。

生徒にする質問は、事前に書いておきます。

覚えておいた方がいいような表現があれば、それも例文と一緒に書いておきます。

その例文も、生徒にとって有用な言葉を使って作っておきます。

 

導入はおそらく5~10分程度でしょうが、その短い内容に備えて、ここまで準備をしなければなりません。

 

準備がすべて、なのです。

 

では、導入を10分やったとして、そのあとはどうすればいいのか。

次回は非常に重要な時間配分について書きます。